No.149
正統の色、その奥にあるもの
国際的な場で安心して選ばれる色は、ダークネイビーとチャコールグレー。
これは単なる慣習ではなく、相手に敬意を示し、自らの立場を誤解なく伝えるための国際的なコードです。
その二大カラーを纏う生地の中で、ゼニア〈トロフェオ〉は特別な存在です。
細やかな繊維を高密度に織り上げることで、軽さと柔らかさを保ちながら、まるで濡れたような艶を放つ。
繊細であるがゆえに縫製は難しく、職人の技術がそのままシルエットに現れます。
トロフェオは、形式ばった堅さよりも、知性と余裕を纏いたい方にこそふさわしい生地です。
国際的な場に立つ経営者、信頼を装いで裏付けたい専門職、そして正装に柔らかな印象や品のある艶を求める方――。
その佇まいは、単なる衣服ではなく立場や価値観を映し出すものとなります。
装いが未来を形づくる。
その一着を、ぜひ実際にご体感ください。
+++ ブランド紹介 +++
§Zegna (ゼニア)§
ゼニアがなぜ世界のトップブランドになったのか――その答えはオーストラリアにありました
イタリア北部・ピエモンテ州トリヴェロ。
この小さな町から、1910年に世界的ブランド〈ゼニア〉の物語は始まりました。
創業者エルメネジルド・ゼニアは「世界最高の生地をつくる」という強い信念を抱き、当時としては一般的だったスペイン産やイタリア在来種の羊毛ではなく、まだ珍しかったオーストラリア産スーパーファイン・メリノウールに目を向けます。
当時のスペインや北イタリアの羊毛は、丈夫さこそあったものの繊維が太めで、最高級服地に求められる「極細のしなやかさと艶」には届きませんでした。
それに比べてオーストラリア産は格段に異なり、繊維が細く柔らかく、しかも均質。寒暖差の大きい乾燥した気候、広大な土地でのストレスの少ない放牧、栄養豊かな牧草――これらの条件が重なり、世界でも稀に見る「超極細の毛質」が生み出されていたのです。
この決断はゼニアを他の織物メーカーと一線を画す存在に押し上げました。やがてその成功は業界全体に波及し、英国やフランスを含む多くの生地メーカーが次々とオーストラリア産に注目。いまや「最高級ウールといえばオーストラリア」と言われるまでに至っています。その先見の明は、ゼニア一社の繁栄にとどまらず、ウール産業全体の歴史を塗り替えたのです。
ゼニアを代表する生地コレクションのひとつが〈トロフェオ〉です。
極細のメリノウールを贅沢に用い、軽さ、柔らかさ、そして濡れたような艶を兼ね備えたこの生地は、世界中の経営者や専門職に選ばれてきました。正統な装いを求める方にとって、トロフェオは「品格」と「しなやかさ」を両立させた象徴といえるでしょう。
一方でゼニアには、生地づくりを超えたもうひとつの側面があります。
それが〈オアジ〉と呼ばれる哲学です。
創業地の山々には「Oasi Zegna(オアジ・ゼニア)」と呼ばれる広大な自然保護区が広がっています。1930年代からゼニア家が植林を続けて守ってきたその森は、いまや100平方キロメートルに及び、地域社会や環境と共生するブランドの姿勢を体現しています。
つまり、〈トロフェオ〉はゼニアの「技術と審美眼の結晶」であり、〈オアジ〉はゼニアの「哲学と価値観の象徴」。
この両輪があるからこそ、ゼニアは単なる高級生地メーカーではなく、自然や文化と共鳴しながら未来へ続く存在であり続けるのです。
一着のスーツの背後に、百年を超える歴史と理念が息づいている――。
それがゼニアというブランドの本質です。格式を纏い、物語をまとうこと。それこそが、現代における真のラグジュアリーなのです。