No.45
***ゼニア トロフェオ***
癒しのオーダースーツ屋カンパネラのTAROO.でございます。
一般的にスーツ生地のハイブランドといえば
□ ロロ・ピアーナ
□ エルメネジルド・ゼニア
□ ドーメル
□ スキャバル
などがあげられます。
これらは、ハイブランドと言われる理由があります。それは徹底した品質の追求と妥協のないこだわりです。
今回はその中でも「エルメネジルド・ゼニア」のお話をさせていただきます。
エルメネジルド・ゼニアは、イタリアを代表するラグジュアリーブランドで、
「アルマーニ」「トムフォード」「キトン」「エルメス」「ヒューゴボス」「ラルフローレン」「ブリオーニ」などに生地を供給しています。
ゼニアの生地の特徴は独特のツヤと手触りです。
生地の原料である羊毛は、そのままでは汚れや余分な油が多くそれらを落とす「洗毛」をします。上質な原毛に油が多く含まれており、洗っても十分に油分が残り自然な光沢感がでます。
ゼニアは契約農場から最上級の原毛を買い付けており、それがあの美しいツヤを生み出しています。
また、「最高のスーツは上質な生地があってこそ」と、洗毛した原毛をイタリアの自社工場で糸に紡ぎ、染色、仕上げる一括管理をし、品質の安定に注力しあの素晴らしい手触りが生まれました。
実はとても面白い話があります。
初代 エルメネジルド・ゼニア氏の父は農家に生まれ、時計製造会社をしていたそうです。
その後、イタリアのフレッチナ地区で織機を使って織物製造会社を始めました。後にこの工場は火事で焼失し、トリヴェロに工場を移すわけですが、ここに共通しているものがあります。
「水」です。
農業においても水は作物の出来を左右し、時計作りにおいても埃を嫌う精密機械ではきれいな水は肝となります。生地製造においても、先ほどお話しましたように洗毛の際に使う水は重要になってまいります。
ゼニアの歴史を知ると、こんな風に「水」で繋がっていることがわかり面白いですね。
20年ほど前に私はイタリアのゼニアの工場を見学に訪れました。品質管理の部門を見学させていただいたのですが、大きく広げた生地の前でピンセットを持った工場の方が一本一本、色の違う糸を引き抜いておられるのを見ました。おおらかなイタリアでこの繊細で丁寧な作業が大きな衝撃だったのを覚えています。
1910年から始まった工場では、今もかわらず品質の追求と妥協のないこだわりを持ち続けていることがハイブランドの所以なのだと噛みしめました。
ゼニアでは、その年に最も高品質な原毛を供給した生産者に対してトロフィーを贈るという制度があります。これは生産者にとって大変名誉な事であり、その刺激によってまたいいもの供給しようと励みます。
トロフィーはイタリア語で「トロフェオ」です。ゼニアが注力して織りあげるトロフェオは、このことが由来となっています。